監視資本主義とは?|全ての行動情報を監視・搾取して収益化する社会

経済

監視資本主義はマーケティングの根幹を揺るがし、 人間のあり方の根本を覆す可能性があるとして注目されています。

・監視資本主義とは何か

・監視資本主義のメリット

・監視資本主義のデメリット

・監視資本主義は世界をどう変えるのか

さっそく見ていきましょう。

 

 

 

 

 

監視資本主義とは何か

監視資本主義は2019年にリリースされた学術本 「監視資本主義―人類の未来を賭けた闘い」(原題:The Age of Surveillance Capitalism )の中で示された概念です。

 

 

 

著者はハーバード大学ビジネススクールのショシャナ・ズボフ名誉教授。

本書のリリースによって監視資本主義という言葉はただの学術用語の範囲を超えて、世界中の人々を震撼させました。その衝撃は未だ冷めやらず、今なお物議を醸しています。

 

 

 

 

監視資本主義社会は顧客満足度が高い豊かな社会

監視資本主義とは簡単に言うと、ピンポイントで人間の欲求を満たすサービスや商品の情報によって収益化することです。

  

・本人が自覚していない欲求に訴えかけるサービスや商品の提供

・人間の欲求を過不足なく満たして収益化

監視資本主義の社会においては顧客満足度 は大きく向上し、それによって企業はより大きな収益を上げることが期待できます。

顧客は自分の欲求が満たされることで満足し、企業も収益が上がる。それによってお金の流通がスムーズになりますから、経済も活性化します。

一見すると、 まさに理想的な経済のあり方のように見受けます。しかしその裏には、大きな懸念材料があると 「監視資本主義―人類の未来を賭けた闘い」の著者、 ショシャナ・ズボフ名誉教授は指摘します。

 

そしてズボフ名誉教授が指摘する内容こそが人間に本能的危機感をもたらしました。その結果、監視資本主義に対して警鐘を鳴らす動きにも通じます。

 

どういうことか、詳しく見ていきます。

  

 

監視資本主義は 強い欲求を高め経済を上向かせる起爆剤

監視資本主義では企業は、人間自身が認識している生来の欲求の他、本人すら気づかない潜在的欲求にも訴えかけるサービスや商品を提供できるようになると考えられています。

 

監視資本主義社会においては

・人間が必要なサービスや商品が適切に提供される

・人間が認識していない潜在的欲求を適切に満たす新しい商品が提供される

 

景気の冷え込み、上がらない賃金、先行き不安、草食化、デジタル化。

これらの理由で、特に若年層を中心に物を買わない人が増えていると言われます。 

戦後の日本は高度経済成長期を迎え、 マイホームや車、大きな画面のテレビや便利な大型冷蔵庫といった、高価なものを購入できることがステータスであり、人々の目指すところでした。

ところが消費社会の成熟化やデフレの影響もあり、現代ではお金を使わなくても豊かな生活を楽しむことができます。

スマートフォン端末ひとつあれば、テレビがなくても好きな動画を楽しめる他、ゲーム、電子マネーによる買い物、情報収集、書籍の購読などが実現します。しかも無料でリリースされているサービスも豊富です。 

スマートフォン端末があれば便利に生活できるのは、少ない収入でやりくりする人にとっては 恩恵の大井あり方です。

しかし景気経済という観点で見た場合、消費が冷え込めば社会を流通するお金が滞ることを意味します。景気は良くならず、国力の低下も引き起こしかねません。

監視資本主義によって顧客のニーズを的確に把握できれば、思わずお金を払いたくなるサービス、買いたくなる商品が増え、冷え込んだ景気を上向かせる起爆剤となることが期待できます。

 

 

監視資本主義は人間の行動を情報で支配し、収益化する 

ただここで、ある疑問が発生します。

・どうやって思わず買いたくなるような商品やサービスの内容を知るのか

・どうして本人も自覚していない欲求を、企業が的確に理解できるのか

 

企業が人間の未来の行動や心の中まで覗き見し、介入してくる。これが監視資本主義の危険な側面です。

監視資本主義の実現にあたっては、企業は様々なデジタルツールを用いて人間の行動情報をくまなく収集します。その結果人間の欲求を適切に満たすサービスや商品を提供できるようになるのです。

・監視資本主義においては、企業が人間の行動情報をくまなく把握する

・人間の未来の行動や心の奥底まで監視し、コントロールして収益化する

これまで企業は何らかの原材料をもとに製品やサービスを生み出し、販売してきました。

しかし監視資本主義社会においては、企業は人間そのものを原材料としてサービスや商品を生み出します。そして人間の行動情報から抽出したデータを基にしたサービスや商品を製造提案。人間に購入させることで収益化します。

環境破壊や消費の過度な増大に伴って、資源が枯渇する危険性が叫ばれてきました。

一方監視資本主義社会においては、人間という資源から抽出した行動情報のデータを最大限活用し、それを人間に買わせて収益を上げます。人間という資源を余すことなく徹底利用する徹底した省エネルギーのリサイクル社会と言えるでしょう。

 

  

 

 

 

監視資本主義のメリット

監視資本主義社会において人間はどのようなメリットを享受できるのでしょうか。

 

・自分の欲求にあったサービスや商品を手に入れられる

・人に言いにくい悩みへの適切なアドバイスやサービス、 手に入れられる

・思わずお金を出しても手に入れたいサービスや物が増えるので、景気が良くなる

・自分の理想のサービスや商品に出会いやすくなるので生活の質が向上する

 

世界はたくさんの商品やサービスに溢れています。しかし自分が本当に必要なものや本当に欲しいものに出会うのは容易ではありません。

 

自分自身の欲求を正しく認識することも、自分の欲求に見合ったサービスや商品を見つけることも、非常に難しいことだからです。

  

また人知れず抱え、 人知れず解決したい悩みもあるでしょう。

 

監視資本主義社会では、自分の過去の行動情報から分析、抽出されたデータに基づいて適切な商品やサービスの提案を受けられます。

自分が無意識下に行っている行動の情報も含めて分析した結果です。自分自身が認識していない、本質的な欲求や事実に基づいた適切なサービスや商品を見つけやすくなります。 

自分にとって適切なサービスや商品を長い時間をかけて探したり、どれが最善なのかを検討するために時間と労力を割くことなく、効率的に生活の質は向上するでしょう。

 

  

 

 

監視資本主義のデメリット

暮らしをより豊かにする監視資本主義ですが、特にプライバシーの問題に関するデメリットが懸念されます。

・プライバシーがなくなる

・立ち入られたくない部分の情報まで企業に抽出され、分析される

・理論上は適切でも、感情的に不適切な部分が見落とされ、不快な提案をされる

・四六時中、企業側の都合で情報を提供提案され疲弊する 

・思考停止しても便利に暮らせるので、自分の頭では考えないことが常態になる

・便利さゆえに過剰な購買に走って散財しすぎる

・常に所有・購買欲を刺激されるので、収入レベルによっては欲求が満たされず不満が募る

 

 監視資本主義のデメリットについて、以下の3つの観点で詳しく見ていきましょう。 

 

・プライバシーが侵される

・思考停止し、人生の主導権を企業に明け渡す

・欲求が刺激されるのに満たしきれないストレスが増える

 

資本主義社会では行動情報は全て監視され、プライバシーが無い

 「監視資本主義―人類の未来を賭けた闘い」の著者、 ショシャナ・ズボフ名誉教授 もこの部分を強く指摘しています。

今すでに問題になっているのが、 Google をはじめとする自社サービス利用者の行動データをくまなく抽出、予測、提案するマーケティング手法です。

・オンラインサービスを利用するたびに、私達の行動情報はすべてデータ化されている

・私たちの行動情報が勝手に分析される

・企業は私たちの行動情報から私たちの心の中を覗き見し、介入してくる

 

商品の購入や情報の検索をはじめ、様々な行動がオンライン上で完結するのは大変便利です。

しかしオンラインサービスを利用するたびに、私たちの行動情報は企業にデータとして収集されています。

既存のマーケティング手法では、サービスや商品の購買結果から消費者の指向性を逆算し、 新たな商品開発に役立ててきました。データは匿名の消費者の行動だけを大局的に捉えたものであり、個々人のニーズにまで対応することはできませんでした。

ところが監視資本主義においては、ビッグデータを捉えるに止まりません。ビッグデータを構成する個人レベルで、購買行動に限らずオンライン上で行った全ての行動情報が抽出されます。

監視資本主義では、プライベートは存在しません。全てがオンライン上で行える便利さの代わりに、オンライン上で行った全ての行動情報が企業に渡ります。

私たちが何者であり、何に興味を持ち、日々どんなことを行って生活しているのかさえも、企業によって把握されるのです。

 

・人間は9割近くの行動を無意識に行っていると言われる

・企業は、人間が無意識に行なった行動データも抽出分析できる

・自分自身よりも、企業の方が自分の行動情報を精密に把握する状態になる

・自分の無意識の欲求を、企業が的確に把握してしまう

・無自覚のうちに企業に 快不快を把握され、気づけば企業にコントロールされている

 

最も恐ろしいのは、本人が自覚していない行動情報までも、企業が抽出把握することです。企業によって無意識下に働きかけられれば、企業が人間行動をコントロールすることも可能になるでしょう。

 

私たちのプライバシーに対して企業がどこまで介入することを許すのか、その線引きが重要です。しかし現段階では、どこまで介入するのかを企業が一方的に決定しています。自分のプライバシーを開示することに対する私たち自身の無自覚さも非常に大きな問題です。

 

 

思考停止し、人生の主導権を企業に明け渡す

監視資本主義では、オンライン上で次から次と私達に必要と判断された情報やサービス商品が提供されます。

自分の価値観などを自分の頭で考える必要はありません。企業から提案された情報に飛びつけば、快適に生活することが実現します。

人は簡単な方に流されます。

思考するということは脳にとって重労働です。思考せずとも快適に暮らせるなら、簡単に思考停止状態に陥るでしょう。

 

それはまるで、自動運転の車に自分の人生の全てを預けているかのような生き方です。

自動運転の車は便利です。しかし自動運転は、完璧に未来を予測できない人間が構築したシステムによって作動しています。 

不完全で見ず知らずの誰かが作ったシステムに自分の人生の全てを任せて生きる。そんな省エネ志向の生き方を望むなら、監視資本主義は理想的でしょう。

しかし自分の人生を自分の力で切り開き、自分で決めた人生をいきたいと考える人にとっては、思考停止状態は 不快でしかありません。

また思考停止しながら生きるのは、企業をはじめとする資本家に自分の人生を預けるということを意味します。 

人間という天然資源の行動情報をくまなく取り上げ、そこから生産したサービスや商品を売り付け、お金がある限り購買意欲を刺激し続けて買わせ続ける。

人間の命が続く限り、死なない程度に搾取され続ける。

 

そこに人間の尊厳は本当にあると言えるでしょうか。

 

・思考停止して生きることは、人としての尊厳を自ら放棄することと同義

 

欲求が刺激されるのに満たしきれずストレスが増える

監視資本主義では、様々な角度から徹底的に研究し尽くされた、人間の欲求に訴えかけるサービスや商品が提案されます。

ところがそれら全てを購入することはほとんどの人には不可能でしょう。

なぜなら、動かすことのできるお金の量には限りがあるためです。また新自由主義で資本主義の社会では、景気が冷え込むば賃金は下がるものの、景気が上向いても賃金が上がることは期待できません。 

 

 

 

 

自分の行動情報を分析した結果導き出された、本能を刺激する欲しいサービスや商品が次から次へと目の前に現れます。しかし自分が自由にできるお金はそう多くありません。

あれもこれも心から欲しいと思う(思わされる)。それなのにお金が足りないので手に入らない。一生懸命働いても給料は増えない。欲しいものばかりが増えていく。

こうして、より一層ストレスを募らせていくでしょう。

ストレスを減らす唯一の方法は、欲求を減らすことです。次から次へと欲求を刺激される監視資本主義では、ストレスは増大の一途。ストレスによって心を病んだり、ストレスを発散するために散財しすぎて経済的に破綻する人が増加することも考えられます。 

 

 

 

 

 

監視資本主義においてはどう行動し、どう情報を守るか

監視資本主義の最大の問題点は、この2つです。

 

・人間の無意識下の行動情報も企業が把握する

・人間の欲求を過剰なまでに企業が把握できる

その結果人間は思考停止に陥り、自分が企業に支配されていることにも気付かぬまま人生の主導権を企業に明け渡してしまうことです。

 

しかし監視資本主義は今後加速することはあっても、減退することはないでしょう。便利さに向かう社会の流れは、止めることができません。

 

そんな中にあって、私たちはどのように生きていけば良いのでしょうか。

 

 

インターネット上の便利なサービスの裏側を監視する 

パソコンやスマートフォンといったインターネットに接続した便利なツールを、私たちの暮らしから排除することは不可能です。

しかし私たちが使っているツールがどのような仕組み、どのようなルールで機能するのかは企業によって開示されています。私たち自身がを知ろうとすれば、知ることは可能です。

企業が私たち人間の行動情報をあらゆる角度から監視しているように、私たちもまた企業の動きを監視しなければなりません。

ただ便利なサービスを享受するだけでは不十分であるのみならず、生涯搾取し尽くされて終わるでしょう。

何事も一歩通行では不十分です。資本主義社会下においては、巨大資本である企業が優位な立場にあります。無自覚に過ごせば、私たちは容易に企業によって支配されるでしょう。

 

私たち自身が自発的に企業に対して審議の目を向けることは、資本主義社会下において自らを守るために欠かせません。

 

 

決して思考停止を許さない

企業は私たちが無意識に行なっている行動情報も把握しています。この点においても企業の方が私達を知り尽くしており、優位な立場にあります。

だからこそ私たちは、決して思考停止してはなりません。思考停止して企業が提供する便利さに身を委ねれば、人生の主導権全てを企業に明け渡すことになります。

考えるのが面倒だから、便利に暮らせればそれで構わない。

そういった考え方もあるでしょう。そういった価値観を否定するものではありません。

ただ、より豊かに暮らしたい、自分の人生をより充実したものにさせたいと願うのであれば、決して思考停止してはなりません。

自分の人生を自分の裁量で生きるためには、脳に楽をさせてはならないのです。

 

 

 

不完全な人間が作って仕組みが、勝手に人生を支配する恐怖

以前、 AI が人間の仕事を奪うのかというテーマについて考察しました。

  

 

  

しかし監視資本主義においても AI の普及においても最も恐ろしいのは、いずれの仕組みも巨大な資本を持った不完全な人間が構築したものであるという点です。

 

 AIは情報処理能力に優れますが、その情報処理のルールを教えるのは不完全な人間です。監視資本主義における人間の行動情報をデータ化、抽出、提案する仕組みを構築するのも、不完全な人間です。

 

巨大な資本を持った不完全な顔も知らない誰かが作り上げた仕組みによって、私たちの人生が支配され、利用され、搾取される。これこそが、 AI化や監視資本主義の発展した社会において最も恐ろしいことではないでしょうか。

 

それは、法によって定められた人間が人間らしく生きるための最低限の尊厳を脅かすものでもあります。

にもかかわらず、便利さというメリットばかりがクローズアップされ、人としての尊厳を明け渡すことに対する危機感が欠落しているのが現状です。

 

そんな思考停止社会に対して、 「監視資本主義―人類の未来を賭けた闘い」の著者、 ショシャナ・ズボフ名誉教授 も強く警鐘を鳴らしています。 

 

 

 

 

監視資本主義下でも人間の尊厳を守るために、思考を止めない

どんな社会においてもカーストが存在します。

資本主義社会においては巨大資本が最上位に位置し、経済的弱者になるほど下層に追いやられます。

経済的な強弱が、人間の尊厳を左右するものではないことは法によっても明示されています。

しかし現実には、経済的強者が人間の尊厳を享受し、経済的強者が収益を上げるために弱者を支配し搾取する社会構造です。そのこと自体の是非を問うても、一朝一夕に解決するものではありません。

では経済的弱者は、強者が収益を上げるために搾取されるしかないかと言われれば、答えはNoです。

経済的弱者の自衛手段。それが、思考することです。思考することは、お金がなくてもできます。思考する訓練をすれば、強者の収益のために一方的に搾取される状態を退けられます。

  

 

 

弱肉強食な監視資本主義を 生き抜く

自然界がそうであるように、 自然界の一部である人間の社会も当然弱肉強食です。経済的な弱者である時点で、強者の収益のために搾取対象になることからは逃れられません。

  

人間は平等ではありません。

しかし自衛手段を身につけることで、一方的な強者の収益のために搾取され続ける頻度を落とし、土合を下げることは可能です。

 

「便利」「満足」「お客様のために」

 

強者は賢いので、耳障りのいい言葉で語りかけてきます。 

 

しかしこれらの言葉を、正しく翻訳できていますか。

 

・便利 = 企業が行動情報を搾取して収益化するのに便利

・満足 = 購入した瞬間が満足の最大値なので、麻薬のように何度でも欲しくなる

・お客様のために = 顧客の欲求にピンポイントで訴えかけるので、購買行動に繋げやすくなる

 

企業の使う言葉を正確に翻訳して理解する思考力を身につけて、企業の収益のために搾取されるだけの人生から自由になりましょう。 

 

 

 

  

 

 

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コメント

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