ここまでの話で、不思議に思われたかもしれません。
「今の日本はデフレのはずなのに、物価は上がっている。」
その疑問は、スタグフレーションという言葉で解決できます。
そしてこのスタグフレーションは、とても危険な経済情勢です。
詳しくみていきましょう。
・デフレなのにインフレな矛盾の理由 ・デフレスパイラルの怖さ ・デフレスパイラルがもたらす影響 ・スタグフレーションを脱する方法とは
デフレなのにインフレな矛盾=スタグフレーション
今の日本の景気はデフレの状態です。
日本がデフレなら、物価は下がるはずです。
ところが、物価が値下がりしていると感じられないのではないでしょうか。
むしろ残業もできず給料は減っているのに、物価ばかり上がって困っているはずです。
実際総務省統計局のデータを見ても、じわじわ物価が上がっていることが見て取れます。
スタグフレーションの始まり:デフレなのに物価が上がる矛盾が起きる理由
デフレ下にあっては、お金の価値が高くなるので物価は下がるのが定石です。
しかしそれは、供給が十二分に行われている、という前提条件があることで成立しています。
商品を欲しい人の数よりも多く商品が市場に出回るが故に、物の価値が下がるのです。
では、商品を生産するための原材料の供給が十分に行われないとしたらどうなるでしょうか。
原材料が不足すれば、当然市場に物が出回りません。
書品を欲しい人の数より市場に出回る所品の数が少なくなれば、物の価値が上がります。
この状態だけ捉えれば、インフレです。
では日本はデフレではなくてインフレの状態なのか??と混乱するかもしれません。
しかし、日本がデフレ下にあることは間違いありません。
ここでもう一度、商品の市場と消費者の状況、そしてお金の動きを整理しておきましょう。
・原材料が不足(この原因は、のちに解説します)
・商品が市場に出回りにくくなる
・物価が高騰する(=インフレ状態)
・不景気で給料が上がらない、もしくは下がる
・失業の不安も
・少ない収入で高い商品を買うので、生活はどんどん苦しくなる
・物価が高いのでたくさんの商品を購入できない
・出費を切り詰め、買い控えする
・市場を動くお金の量が減る
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景気悪化に拍車がかかる
消費者は不景気で給料が上がりません。
収入が増えない消費者のは買い控えし、市場にお金が出回らなくなります。
消費者の購入活動が鈍化すれば、企業が利益を出せません。
企業は不景気で利益を出せないので、従業員(消費者)の給料も上がらない、もしくは下がってしまう恐れもあります。
物価だけがインフレで、消費者も企業も不景気なデフレ状態。
これを「スタグフレーション」と呼びます。
最低最悪な不景気のことです。
そして一部では、今の日本はデフレではなくスタグフレーションに陥っていると懸念する向きもあります。
日本はなぜ、スタグフレーションに陥ったのか
ではなぜスタグフレーションに陥るのでしょうか。
フタグフレーションに陥る原因を分析していきます。
スタグフレーションに陥る原因1:なぜ物価は値上がりしたのか
食料品や日用品は、なぜ値上げされたのでしょうか。
4つの理由が考えられます。
生活必需品の供給不足
日本は非常に食料自給率が低く、日用品の供給を海外からの輸入に依存しています。
農林水産省が発表した令和元年度の食料自給率は、38%です。
生活必需品を海外に依存すれば、天候や政治などといったさまざまな条件で供給量が不安定になりがちです。
供給量が減少すれば物価は上昇します。
また円安のために物価はさらに上がりますから、物価はますます上昇の一途です。
人件費の上昇
海外に生産拠点を置く企業が増えています。
アジア諸国を中心に、海外の方が人件費が安い時期があったためです。しかし最近の円安の影響、またアジア諸国の成長は目覚ましく、海外工場で働く従業員の人件費が上昇しています。
人件費が上がった分、販売価格に上乗せしなければ利益が減少します。そのため、物価は上昇しています。
また以前は人件費を浮かせるために海外で従業員を雇っていた企業が、国内に工場を戻し、国内で雇用を進めるケースも増えています。
しかし、製造業の国内における労働需要は少ないのが現状です。
それによって深刻な人材難に見舞われ、結果として供給が追いつかなくなる現状もあります。
原材料費の上昇
日本は資源に乏しいため、製造業で用いる原料のほとんどを海外からの輸入に依存しています。
そんな中にあって、景気低迷により日本円の価値が下落。
長く円安が続いています。
円安の状態で海外から原材料を購入しようとすると、円高の時よりもコストがかかります。
原材料費が高くなりますから、商品を値上げせざるをえません。
輸送コストの上昇
輸送コストを高騰させる原因は2つあります。
1つは、ガソリン価格の高騰です。
2つ目の理由としては、深刻な人材不足です。
特に物流業界では、ネット通販の利用が増え他のに対して、ドライバーの人手不足はより一層深刻化を増しています。
インフレと景気は基本的には連動する傾向がありますが、必ずしも連動しません。
インフレには以下の2種類があります。
このタイプのインフレは、景気が良いときに起きます。物価が上がっても生活、家計、経営への影響は小さいのが特徴です。
これは景気の良し悪しに関係なく起きます。
景気が低迷しているときや後退しているときに起きることによって生活負担が大きくなります。
これをスタグフレーションと呼びます。
景気停滞を意味するスタグネーションと、インフレーションを組み合わせた言葉です。
スタグフレーションを打開する方法
スタグフレーションは物を供給する側に原因があり、悪性インフレとも呼ばれます。
対策としては、エネルギー消費量を節約したり、生産コストを下げる工夫を凝らすなど、かなり大規模で国家レベルのテコ入れが必要です。
では、スタグフレーション下にあって消費者、労働者にできることはなんでしょうか。
給料が上がらないことを嘆いても何も変わりません。
収入が少ないことが家計を圧迫しているのなら、自分で小さな事業を始めて収入を増やすのはどうでしょうか。
余剰資金があるなら貯金ではなく投資に回して資産運用し、企業にもお金を流して見るのはどうでしょう。
経済は人間の心理を反映します。
不安に怯えて萎縮していては、経済は停滞の一途です。
経済は国が動かしているものではありません。
微力ではあっても、一人一人の国民も経済に影響を与えています。
お金が足りないことを嘆くのではなく、お金の動きを自分で作っていける強い個人を目指す人が増えることが、ひいては日本の景気を上向かせる現努力になります。
1人1人は小市民でも、その力が集結すれば大きな力になり得る可能性を秘めているのです。
一人一人の経済活動が国を動かしていることを、忘れてはなりません。
私たちは一方的な被害者ではなく、過去の経済活動のツケを払っているだけです。
何を買うのか。
大切な時間と労力を投じて得たお金を何にどれだけ使うのか。
今の選択が、未来を作ります。
そう考えると、希望が見出せるのではないでしょうか。
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